以前、「輸入できない、輸入しないほうが良い商品」として、子ども関連商品をご紹介しました。
最近では、ある商品の部品で6歳の女の子が死亡してしまうという事故が起き、そのことについてメーカーとリフォーム業者が計約8000万円の損害賠償を求める訴訟を起こされたというニュースがありましたね。
毎日新聞:網戸のひもで6歳死亡 両親、アルミ建材大手を提訴 「欠陥で首に絡まり」
私たちは中国から製品を輸入しています。
中にはOEM生産などオリジナル商品をつくって販売している人もいます。
自分のオリジナル商品として販売する以上、小さいながらもメーカーという立場になります。
今回のような事故はこの製品に限って起きたことではなく、極端な話をすればどんな商品でも起こり得ることです。
今回は注意喚起も兼ねて、オリジナル商品を販売する際に忘れてはいけないことや自覚すべきことをお話します。
目次
Toggle覚えていますか「殺人チャイルドシート」
以前このコラムで取り上げた商品はチャイルドシートです。
安全基準を満たさない危険なチャイルドシートが「儲かるから」という理由だけで販売され続け、ついには大規模なリコールに発展したというお話です。
このときは、「儲かるから」という理由だけで販売するのはNGで、一番大事なのは法令順守だというお話をしました。
冒頭でご紹介したニュースは、ブラインドの開き具合などを調整する紐に首が引っかかってしまったという内容でした。
該当の商品は何かの法律に違反していたわけではありません。
商品として必要な部品ですが、訴えられています。
ポイントは記事中の下記の部分です。
窓のブラインドなどのひもが首に絡まる事故は過去にも多発しており、父親は27日の第1回口頭弁論で「安全対策を講じていれば事故は防げた」と訴えた。
引用元:https://mainichi.jp/articles/20201027/k00/00m/040/194000c
つまり、事故が起きたのは、過去にも事故が起きていたのに改善しなかったメーカーの責任だと言われているのです。
本コラムではどちらの言い分が正しいのかを議論したいわけではありません。
メーカーとして忘れてはならないのは、「商品が自分たちが考えもしないような使われ方をしたり、思いもよらない形で事故が起きる可能性がある」ということです。
いくら丁寧な説明書を用意しようと、すべてのお客様が100%説明書通りに使ってくれるわけではありません。
説明書に大きく記載をしても、危険な使い方をしてしまうことがあるかもしれないのです。
気にしすぎると売るものがなくなる?
しかし、私たちがおこなっているOEMでは、ひとつひとつの製品について製造元に依頼して安全性を改善させるのはなかなか難しいものです。
また、もしかしたらこれは危ないかもしれない…などと怖がってばかりいると、今度は売るものがなくなります。
さらに、今回のブラインドの事故のように、特に法令違反ではない商品でも事故が起きてしまうとなると、どんな商品が大丈夫でどんな商品がダメなのか見当がつかなくなります。
そういう中で、どんな商品を取り扱っていけばよいのでしょうか。
法令順守は当たり前の話ですが、それ以外には「危険なものを判断する嗅覚」を養っていくほかにないと思います。
嗅覚というと曖昧になってしまいますが、要するに「法令的な規制はないけれども扱わないほうが良いもの」という意味です。
その判断基準としては「もし、この製品が壊れた時に重大な事故になりそうか?」と想像を重ねていくのがひとつのやり方です。
筆者の場合ですが、例えばグラビディブーツです。
参考:Amazon検索結果
これは、足首に着けて逆さまになってぶら下がる健康器具です。
これを見た時、確かにAmazonでは売れていましたので、儲かるかどうかの判断ではOKです。
しかし「嗅覚」ではNGでした。
もし万が一この器具が壊れて人が落下した場合、「頭から落ちると、頭と首に全衝撃が加わわるな」つまり「もし、この製品が壊れ時に重大な事故になりそう」と感じ取ったのです。
結局、この商品は仕入れませんでした。
頸部牽引装置も同じです。
参考:Amazon検索結果
上記の判断はあくまで筆者の「嗅覚」ですので、「そんなことは起きない、大丈夫だ!」と判断する人もいるかもしれませんし、その意見はもちろん否定しません。
ここでお伝えしたいのは、法にさえ触れていなければOKという単純な発想ではなく、「この製品は安全か?重大な事故につながる恐れはないか?」という視点でもう一度商品を見直してから取り扱うかどうかを検討してほしいということです。
素材には規制があるが飾りや形態には規制が無い「子ども服」
実は、「子ども服」で重大事故(死亡事故)は毎年起きています。
日本に輸入される衣類には残留している化学物質の最低基準があり、それをクリアした商品が流通しています(しているはずです)。
その中でも特に24か月以下の乳幼児用の衣類などに関しては、別途「ホルムアルデヒド」という物質の基準も設定されています。
名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれませんね。
規制の対象品目、物質名や基準値は下記リンクからご確認ください。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/japan/regulations/pdf/free/consumer-j_2010.pdf
こういう基準が乳幼児用を含めた衣類にはあるのですが、その形状(デザイン)については特に規制がありません。
しかし実際には、乳幼児を含む子どもの事故(死亡事故を含む)が起きるのはデザインが原因になっていることが多くあります。
どんなデザインが事故を起こしていると思いますか?
怖いのは、事故を引き起こしてしまった商品が特別に変わったデザインや形状をしているものではないことです。
例えば、女の子の服には多い「リボン」や男女ともによくある上着の「フード」です。
ごくごく当たり前のデザインや形状ですが、これらが事故につながっています。
経済産業省も子ども服の安全性の注意喚起をしています。
参考:「子ども服の安全基準、知っていますか?」
参考:「その服、「カワイイ」だけで選んでいませんか?」
これはあくまで「基準(こうやって作ってね)」であって「規制(作っちゃダメ)」ではないので、売ること自体で罰せられることはありません。
ですが「事故を引き起こす危険があると既にわかっていて、さらに国が注意喚起までしているもの」という認識は必要ではないでしょうか。
現在のAmazonでもフードやリボン、紐のついたベビー服がたくさん売られています。
「みんなが売っているから大丈夫!」ということは一切ありません。
子ども服に限らず、今一度、現在販売している商品は本当に売っても大丈夫なのか、安全に安心して販売できるのかを考えてみてはいかがでしょうか。
買ってくださるお客様のことを一番に考えていれば、事故などの危険が潜む商品を軽々しく販売できないと思います。
販売者としてどうありたいかを、改めて考えてみていただきたいと思います。
投稿者プロフィール
- 梅田 潤
- 合同会社梅田事務所代表。1977年生まれ。大阪府出身。副業で中国輸入ビジネスを始め2014年に株式会社オークファンを退社し独立。現在も現役プレーヤーでAmazonの他、国内・海外クラウドファンディングにも取り組みながら、家族との時間を大切にする自分らしく自由な暮らしをしている。最新の著書に『「ゆる副業」のはじめかた 輸入・ネット販売』(翔泳社)
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