ECサイトを運営するうえで、物流が担う役割は大きなウェイトを占めます。
まだまだ成長産業とされるEC業界において、物流システムを確立させることは、扱う商材に関係なくECサイト運営者の共通の課題となるでしょう。
今回は、物流システムについて掘り下げ、課題と対応策について解説していきます。
目次
ToggleECサイトと物流
ECサイトではインターネット上で取引がおこなわれるので、販売者と購入者が顔を合わせる機会はほとんどありません。
「家に買った商品が届けられる」ことが前提の取引のため、ECサイトと物流システムは常に円滑な連携が取れている必要があります。
近年はスマホからの購入も増え、購入者の年代も幅広くなっているので「早く届いて当たり前」といった風潮さえあります。
これからのECサイトは、魅力的な商品開発と並行して効率的な物流システムの確立が、顧客満足度に大きく影響してくることになるでしょう。
バックヤードを支える物流の仕事
ECサイトで扱う商材は、製造業者や卸業者から入荷され、販売と同時に発送されます。
無事出荷するには、途中いくつもの大事な工程を経ることになります。
入荷~検品
ECサイトの特徴の一つとして、多品種の商品を小ロットで入荷することがあげられます。
そのため、入荷時の品種や数量を合わせる検品作業が大変重要になってきます。
検品作業の後は品種ごとに棚に振り分ける作業を伴うために、どうしてもアナログ作業に頼る部分が多く、時間がかかる工程になります。
品種によっては、単純な数量合わせに留まらず、汚れや異物混入、動作チェックが伴うのでとても大切な作業になります。
保管
検品が済んで決められた棚に振り分けられた商品は、ただ置いておくだけが保管ではありません。
出荷時に間違いが起こらないように、棚卸方法から保管状況まで細かく決めておく必要があります。
商品に使用期限があるものや、返品があったときの保管場所の規定まで、細かな管理方法を決める必要があります。
管理が曖昧なままでは、この後の作業効率に大きく影響することになります。
ピッキング~出荷時検品
注文が入ると出荷指示書(ピッキングリスト)をもとに商品を取りだし、出荷前の検品に移ります。
出荷時の検品は入荷時の検品と同じく、発送に必要な数量とピッキングされた数量を照らし合わせて確認していきます。
また、品種によっては再度汚れや異物混入の点検が行われることもあります。
梱包作業
商品の大きさ、数量に合わせての梱包が必要な場合も少なくありません。
特に、液状の商品や輸送時に破損する恐れがある商品は、緩衝材を用いて梱包します。
またギフトやプレゼントとして購入されたときは、ラッピング作業が伴うこともあります。
梱包が行われた状態が、顧客に届けられる状態でもあるため、購入者にそのまま手渡しできるくらいの梱包が求められます。
配送業者に引き渡し
注文が入ってから配送業者に引き渡しが済むまでは、時間との勝負です。
決まった時間に集荷にくる配送業者に、発送用商品を全て準備しておかないと配送日がずれ込むことも起こってきます。
配送日が1日遅れるだけでも顧客満足度に影響するため、迅速かつ丁寧な作業が求められるのが物流の現場になります。
物流の現場にある課題とは
物流で課題となってくるのは、大別して管理面と費用面の2つになります。
ECサイト運用者は、販売に長けている人は多くても、物流にまで深い知見のある人は多くないでしょう。
物流業務は簡単ではありません。
業務範囲も広いため、専門職の人が配置されることが望ましいでしょう。
管理工程~ヒューマンエラーをどうやって減らすか
商品管理・在庫管理は物流の中でも重要度の高い工程です。
管理の中で起こりやすいのがヒューマンエラーに絡んだもので、ピッキング・検品のときに起こりやすいといわれています。
商品の破損、数量間違い、返品処理方法の不徹底からくる在庫数間違いなど、管理工程のミスが販売にまで影響することも少なくはありません。
【対応策】
作業ミスは「うっかり」だけが原因ではなく、多くの場合は属人化が原因になっていると言われています。
作業工程は担当者だけが把握すればいいものではなく、ミスを防ぐためのチェック体制や各工程における認識共有が不可欠になってきます。
管理工程の課題解決は、分かりやすい管理システムの確立と属人化しない認識共有がポイントになってくるでしょう。
人員管理~時期によって変わる適正人数
ECサイトも繁忙期や閑散期があり、常に同じだけの人員が必要ではありません。
物流においての人員数は、出荷作業の効率に直結するため、とてもシビアな問題になってきます。
繁忙期に人手が足りないと、当然のように出荷作業に遅れが生じてきます。
しかし、余るほどの人員配置が得策なわけでもありません。
人手は人件費に関わることなので、人数調整をすれば良いというような単純な問題ではないでしょう。
【対応策】
考えられる対応策は「業務マニュアルの単純化」と「複数工程作業の標準化」があげられるでしょう。
属人化を避けて、担当者だけが工程を把握することなく共通認識としての作業工程マニュアルの作成が、必要人数での作業効率化につながることになります。
別工程の発生~ギフト対応
通常の発送までの工程に、随時発生する別工程があります。
今やECサイトの重要な収入源となりうるギフト対応、いわゆる贈答品にどこまで対応できるかが大きな課題になります。
ひと昔前なら、贈答品のラッピングや、のしにまで対応してくれるECサイトはわずかでしたが、贈答品の需要が増えるにつれ対応サイトも増加しています。
贈り物である分、細やかな対応が望まれますが、パターンが多様なので通常工程の枠に組み込むのは無理があります。
ギフト対応ができるかどうかも、売り上げに大きく影響してくるでしょう。
コストの課題~固定費
物流システムにおいては、保管時の管理費・光熱費・人件費など「固定費」の比重が高くなるのが特徴の一つです。
加えて、配送業界の人手不足にも起因する輸送費が高止まりしていることも、費用面の課題解決を難しくしています。
【対応策】
人員管理の問題でも触れましたが、ここでも人件費が大きく影響してくるでしょう。
保管費や光熱費などは、削減が難しい費用になるので、いかに少数の人員で作業ができる体制づくりが確立できるかがポイントになります。
工程管理の簡素化や効率的な作業ができる人員配置が、無駄な作業を省き余計な残業代の捻出を抑えることにつながります。
もう一歩踏み込んだ解決策
顧客ニーズが、商品だけでなく、滞りない配送にまで及んでいる限りは、今まで通りの課題解決だけでは不足といえるでしょう。
次は、従来の解決策からもう一歩踏み込んだこれからの解決策を解説します。
販売と物流を一元管理するシステムの導入
「販売」と「在庫管理」は全く別業務でありながら、深く密接した関係で成り立っています。
どんどん高度になってくる顧客ニーズに即座に対応するには、連携の取れた一元管理が不可欠になるでしょう。
実際の在庫数が販売担当に伝わるまで、タイムラグがあっては信用問題になりまねません。
常に販売と在庫管理の連携が取れている状態にすることが、ECサイトの発展にもつながってきます。
アウトソーシングも視野に
販売と物流は全く別業務で、管理が難しい仕事です。
専門的なノウハウをもった業者に、アウトソーシングするのも選択肢になるでしょう。
基本料金以外は、発送の都度料金が発生する形態が多いため、変動費の割合を上げて固定費を削減する効果も期待できます。
これからのECサイトに求められる物流の姿
冒頭でも述べた通り、ECサイト運営の中で物流の占めるウェイトは決して小さくありません。
ECサイトは、ただ販売をすればよいわけではなく、商品を無事にお客様の手元に届けるまでが仕事になってきます。
ECサイト運営者は、販売業務と物流業務はどちらも専門性が高いということを認識し、場合によってはアウトソーシングを検討するなど、自社の状況を分析しながら柔軟に対応していくことが必要です。
自社で在庫管理をしない「無在庫販売」という方法もあります。
販売プラットフォームによっては無在庫販売を禁止しているところが多いですが、自社サイトでの販売であれば、無在庫販売によって在庫管理の手間を省くこともできます。
たくさんの選択肢の中から、自社に最適なやり方を実践していきましょう。
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