近年、EC事業が世界的に大きな成長を見せる中で、物流センターへの関心が高まっています。
そんな中、通販サイト大手のAmazonでは、「Amazon Robotics」と呼ばれるロボットを次々と物流センターに導入し、物流業界に革新を起こしています。
EC事業に関わらずあらゆる業界で、荷物の発送・受け取りに欠かせない物流センターですが、具体的にどんな場所なのか想像しにくいかもしれません。
そこで今回は、物流センターの概要を解説。
5つの種類と6つの機能も紹介していきます。
ぜひ最後まで読んで、物流センターへの理解を深めてみてくださいね。
目次
Toggle物流センターとは
そもそも物流センターとはどんな場所なのでしょうか。
この章では、物流センターの機能や種類をより理解しやすくするために、以下の二つの項目を解説していきます。
・物流センターの概要
・「物流センター」と「物流倉庫」の違い
物流そのものの詳しい解説は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。
物流センターの概要
物流センターとは、生産した商品を購入者のもとへ届ける前にさまざまなプロセスを加える場所のこと。
具体的には以下の6つの機能を持ち、輸送や保管に限らず細分化されたさまざまな業務を担います。
・輸送
・保管
・ピッキング
・流通加工
・検品
・包装・梱包
原材料の生産拠点・加工工場・卸業者・販売業者・消費者などさまざまな人々が関わり、円滑な運営が求められる物流において、物流センターは効率的に商品を動かすうえで非常に重要な役割を果たしています。
これらの6つの機能については、後ほど詳しく解説していきます。
「物流センター」と「物流倉庫」の違い
物流センターとよく似た言葉の1つに、物流倉庫があります。
これらにはどんな違いがあるのでしょうか。
物流センターが商品の保管・輸送を始めとするさまざまな役割を持つ一方、物流倉庫は商品の保管に特化しています。
つまり、物流センターは物流倉庫よりもさらに細分化された複数の業務を包括しておこなう、マルチなニーズに対応した場所と言えるでしょう。
近年、物流プロセスやビジネス形態が多様化する中、物流センターはより主要な場所として活用する企業が増えています。
物流センターの6つの機能
先ほど物流センターには以下の6つの機能があると紹介しました。
・輸送
・保管
・ピッキング
・流通加工
・検品
・包装・梱包
この章ではより物流センターの理解を深めるために、これらの機能について一つずつ詳しく解説していきます。
輸送
物流センターの一つ目の機能は輸送です。
商品は物流センターを経由し、生産拠点からさまざまな場所へと運ばれていきます。
物流センターで活用される配送・輸送の手段には主に以下が挙げられます。
・トラック
・鉄道
・航空機
・船舶
これらの輸送手段を効率よく活用するために、鉄道沿線・空港内・港内などに物流センターが設けられることもあります。
保管
物流センターの二つ目の機能は保管です。
保管には目的地まで輸送するまでの間、一時的に商品を置いておくだけでなく、以下のような役割があります。
・冷凍や冷蔵倉庫で品質を一定に保つ
・在庫数を正確に把握する
また、ニーズに応じてすぐに発送できるように、保管時には「ロケーション管理」と呼ばれる管理方法がとられます。
ロケーション管理では商品や保管場所に番号を割り当て、どんな商品がどこにいくつあるのか正確に把握可能です。
実際に管理をする際は、効率的に大量の商品を記録するために、ハンディターミナルなどの機器が使われます。
ピッキング
ピッキングとは必要な商品を集める作業を意味し、物流センターでの重要なプロセスの一つです。
ピッキングには以下の2種類の方法があります。
・シングルピッキング
・トータルピッキング
シングルピッキングとは、オーダーがある度に商品をピッキングする方法で「摘み取り式」や「オーダーピッキング」とも呼ばれます。
出荷件数が少ない場合に適した方法であるため、EC事業などのBtoC系の物流センターでよく採用されるピッキング方法です。
一方トータルピッキングとは複数のオーダーの商品をまとめてピッキングし、仮置き場などでオーダー別に仕分ける方法で、「種まき方式」とも呼ばれます。
トータルピッキングは、出荷件数が多い物流センターでよく用いられる方法です。
流通加工
流通加工とは、流通の過程で商品に付加価値を付けるために行われる加工のことです。
例えば、商品の箱詰め・値札やタグ付け・リボン掛け・ラベル貼りなどが流通加工として挙げられます。
商品や物流センターによっては、検針やプレス加工などもこの工程に含まれることも。
物流センター内で流通加工する場合のメリットは以下のとおりです。
・商品の質を高められる
・消費者の満足度を高められる
・工場や店舗が製造や販売に専念できる
・リードタイムを短縮できる
・コストを削減できる
流通加工は他ブランドの商品と差別化し、より高い価格で販売できることから、さまざまな業界で活用されています。
検品
検品もまた、物流センターの重要な機能の1つです。
正しく商品が納品・出荷されているかどうかを確認するために、入荷と出荷のタイミングで行われます。
一見シンプルな作業にも思えますが、販売後に不良品が出た場合には検品の内容が責任の所在に影響することもあるため、特に慎重さが求められるプロセスと言えるでしょう。
検品では、主に以下の項目を確認します。
・数量
・品質
・性能
・規格
・破損、傷の有無
手作業で全ての商品を検品すると膨大な時間がかかるため、現場では在庫管理システム(WMS)やハンディターミナルなどが用いられることも。
目視での確認が難しい場合は、金属探知機やX線検査機などの機械で検品する場合もあります。
包装・梱包
物流センターでは包装・梱包も行われます。
梱包・包装には以下の目的があります。
・振動や落下による破損を防ぐ
・温度や湿度、菌などによる品質の低下を防ぐ
・内容物に関する表示や説明をする
・荷扱いしやすい単位にまとめる
包装・梱包をする際は、JIS(日本産業規格)が定める定義に従って「個装」「内装」「外装」が施されます。
「個装」とは、チョコレートの包み紙のように商品単体に施す包装で、商品価値を高めたり商品同士の癒着を防ぐためのものです。
「内装」とは個装をまとめるために施される包装で、衝撃、水、湿気、熱、光などから商品を守る役割があります。
「外装」とは、箱、袋、樽、缶などのように、内装をまとめるために施される包装で、輸送時の商品の汚れや破損などを防ぐためのものです。
物流センターの5つの種類
物流センターには6つの機能があると紹介しました。
これらのうち、どの機能を持ち合わせているかによって物流センターは以下の5種類に分類されます。
・デポ
・TC(トランスファーセンター)
・DC(ディストリビューションセンター)
・PDC(プロセスディストリビューションセンター)
・FC(フルフィルメントセンター)
この章では、物流センターの5つの種類について詳しく解説していきます。
デポ
デポ(depot)とは小規模な物流拠点を指し、「ストック・ポイント」と呼ばれることもあります。
施設そのものの規模が小さいため、必要最小限の在庫のみを持ち、配送に特化しているのが大きな特徴です。
一般的に、大規模な物流センターの周辺にエリアごとにデポを配置し、デポを経由して消費者や店舗などに商品を配送するケースが多く見られます。
デポを使えば比較的に短い距離・時間で配送先に荷物を届けられるため、より高頻度かつ迅速な配送が可能になるなどのメリットがあります。
TC(トランスファーセンター)
トランスファーセンター(Transfer Center)の略であるTCは、日本語で「通過型物流センター」とも呼ばれます。
その名のとおり、荷物の積み替え・配送を中心とした機能を持ち、商品を保管することなく別の目的地へと出荷します。
TCの主な例としては、コンビニチェーンの物流センターが挙げられるでしょう。
エリアごとに別のトラックへの積み替えのみを請け負う場合もありますが、検品や仕分けなどの機能を持つTCも見られます。
DC(ディストリビューションセンター)
TCとは反対のシステムをもつ物流センターがDC(ディストリビューションセンター)です。
日本語では「在庫型物流センター」とも呼ばれます。
TCが商品を保管せずすぐに出荷するのに対し、DCでは大量の商品を保管することが可能です。
保管以外にも、DCには以下のような機能があります。
・ピッキング
・流通加工
・検品
・包装・梱包
広い保管スペースを持つDCでは、急な注文があってもすぐに在庫を確保し、発送できるのがメリットです。
PDC(プロセスディストリビューションセンター)
プロセスディストリビューションセンター(Processes Distribution Center)の略であるPDCは、日本語で「流通加工・在庫型センター」とも呼ばれます。
主な機能は、保管、流通加工、ピッキング、検品、包装・梱包など。
DCと似ているようにも感じますが、名前からも想像しやすいとおり、PDCではDCよりもさらに高度な流通加工ができる設備が整っています。
例えば、DCでは難しい食品の加工やパソコンなどの組み立ても、専門的な機械が揃うPDCなら対応していることも。
生鮮食品の取り扱いも多いため、工場のような空調設備や生産ラインを併設していることもあります。
FC(フルフィルメントセンター)
フルフィルメントとは、ECサイトで商品を購入してから消費者のもとへ届くまでの一連のプロセスを指します。
従ってFCとも呼ばれるフルフィルメントセンターとは、主にEC事業における商品の保管~発送までを担う物流センターです。
中には、商品の仕入れから顧客のデータ管理、クレーム対応まで全てをFCでおこなうこともあります。
FCの代表的な例としてAmazonが挙げられるでしょう。
日本国内だけでも多数のFCを持つAmazonは、「Amazon Robotics」をはじめとする独自の最先端のシステムと設備を持ち、自動ライン化された物流センターを展開しています。
立地で分類される2つの物流センター
物流センターはその機能によって5種類に分類できると紹介しました。
一方で、視点を変えてみると物流センターは立地によって以下の2種類に分類することもできます。
・生産立地型倉庫
・消費立地型倉庫
この章ではこの2種類について詳しく解説していきます。
生産立地型倉庫
生産立地型倉庫とはその名のとおり、商品の生産地に近い場所に配置された倉庫や物流センターを指します。
主に農産物、アパレル製品など、仕入先が多い業界でよく見られる形態です。
生産地に近い場所に拠点を設けることで、仕入先から短時間で効率よく商品を集めて販売することができます。
消費立地型倉庫
消費立地型倉庫とは、消費地に近い場所に設けられた倉庫や物流センターを指します。
生産立地型倉庫とは反対に、食品など販売先の数が多い業界でよく活用される形態です。
販売先の近くに拠点を設けることで、短い納期や急な注文でも柔軟に対応できるメリットがあります。
まとめ:物流センターにはさまざまな機能・種類がある
物流センターとは、生産した商品を購入者のもとへ届ける前にさまざまなプロセスを加える場所です。
具体的には以下の6つの機能を持ち、輸送や保管に限らず細分化されたさまざまな業務を担います。
・輸送
・保管
・ピッキング
・流通加工
・検品
・包装・梱包
これらのうち、どの機能を持ち合わせているかによって物流センターは以下の5種類に分類されます。
・デポ
・TC(トランスファーセンター)
・DC(ディストリビューションセンター)
・PDC(プロセスディストリビューションセンター)
・FC(フルフィルメントセンター)
一方で、物流センターは立地によって以下の2種類に分類することもできます。
・生産立地型倉庫
・消費立地型倉庫
ぜひこれらの特徴を掴んで、物流センターの概要を抑えてくださいね。
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