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物販の生産性を阻害する「損切のタイミング」の考察と対策

物販では仕入れと共に避けては通れないものがあります。
それが「損切」です。

在庫処分という言い方のほうが一般的ですが、ここではあえて「損切」という言い方にします。

なぜなら、在庫処分だとまだ利益が少し残っていたり、ただ在庫の量を調整するとか決算前で在庫を減らす必要があるなど、商品自体の損益に関係なく行うことがあるからです。

今回は、この「損切」について、筆者なりの考え方をお伝えしたいと思います。





「どうしても売れない商品」はある

頭を抱える人形

「損切」は書いて字のごとく「損をしてまで切り捨てる」ことですので、利益が残るどころか、他の商品の利益を食ってしまう行為です。

ですが、物販において仕入れを起こしている以上、先のことはわかりません。

いくら売れる見込みのある商品であっても突如として売れなくなることもありますし、季節商品にも関わらず売れているからと言って過剰な在庫を抱えてしまい、シーズンが終了してしまって全く売れなくなることもあります。

色々な理由で「どうしようもない売れない商品」ができてしまうのが、物販ビジネスです。

もちろん、そんなものができないように日々販売データや在庫と向き合い、リスクを最小限にしなければなりませんが、どうしようも無いことは起こります。

その時に大事なことは、起きたことにどう対処するかです。

売れない商品は、正直に言うと、見るのも嫌になってしまうほどやっかいなものです。

ですが、それもあなたの在庫であり、手元にある商品であることは事実ですので、どうにかしなければいけません。

転売ヤーを事例に損切のタイミングをはかる

コインとグラフ

ニューモデルが出る商品の宿命

こんなニュースが出ていました。
『スイッチ「有機ELモデル」登場で転売ヤー焦る 従来品さばこうと投げ売りか』(JCASTニュース)
https://www.j-cast.com/trend/2021/10/01421638.html?p=all

ゲーム機「ニンテンドースイッチ」は、転売ヤーが良く取り扱う商品です。
発売時には電気店や量販店に転売ヤーが並び、大量に仕入れてメルカリやヤフオク、Amazonなどのネットで転売することで知られています。

元から生産量がそれほど多くなく、発売からあっという間に品薄になることから、転売ヤーが目を付けたのですね。

過去モデルの発売時には、同様のケースが起きています。

そんな中で今回起きたのは、次モデルが発売されるタイミングで、以前のモデルの在庫を抱えていた転売ヤーが投げ売りをしているというものです。

今回新しく出るニンテンドースイッチは画面が有機ELを採用するということで、従来の商品とは一線を画す仕様になっています。

そのため、多くのユーザーが新しいほうのスイッチに流れることが予想されますので、転売ヤーが焦っているのです。

こういう現象は、スイッチだけではなくニューモデルが出るカテゴリであれば必ず起こり得るものです。

例えばiPhoneやゴルフクラブなどもそうですね。

そしていったんニューモデルが出始めると、旧モデルは怒涛のように価格が下がります。

安売り合戦が始まってからでは遅すぎる

そうなってくるともう価格下落に歯止めはかかりません。
とにかく安売り合戦が始まる訳ですが、今日のテーマ「損切」はこのタイミングで良かったのでしょうか?

現行モデルはニューモデルが出るまで売り続けて、ニューモデルが発売されたら一斉にみんなで投げ売りをして、価格競争をすれば良いのでしょうか?

結論から言えば、それは「遅すぎ」ます。

理由としては、みんなが一斉に値下げをして投げ売りを始めてしまったタイミングでは、どこまで価格が下がるか見当がつかないからです。

つまり、その値下げがどれだけ利益を圧迫するのかの予測が立てにくくなるからです。

損切のせいで、今まで得た利益が全部なくなるならまだしも、それ以上の資金を吐き出す結果にならないとも言い切れません。

周りが投げ売りを始めたタイミングは、負のスパイラルに陥る第一歩だと思ってください。

損切はもっともっと前の段階行うべきもので、周りの状況を見て判断すべきものではないからです。

「見切り千両、損切り万両」

お札と棒グラフ

「見切り千両、損切り万両」とは

相場の格言のひとつで「見切り千両、損切り万両」というものがあります。

買った株が値下がりしたときなどに、せっかく買ったが収益の見込みがないと見切りをつけることは千両の価値があり、それが例え損が出ても良い覚悟で売買することには万両の価値があるという例えです。

いかに損切できることが重要なのかが伝わってくる格言ですが、逆の見方をすればこういう格言になるほど「損切」は難しいものなのです。

難しいというのは、技術的なことよりも、むしろ心理的なところです。

やはり、相場であれ物販であれ、利益を見込んで買ったものを、損を出してまで手放さないといけないのはつらいものがあります。

どうしても「もしかしたら売れるかもしれない」「利益が出るかもしれない」と、淡い期待を持ってしまう気持ちは十分わかります。
私だってそのひとりです。

損切をしないとどうなる?

ですが、損切をしていかないことには物販の生産性を阻害することになります。

物販ではいかに仕入れ⇒販売⇒回収のサイクルを回していくかが重要です。

このサイクルの中のひとつが滞ってしまうと、他のものも悪循環になって、物販ビジネスそのものが立ち行かなくなってしまいます。

先ほど例に出した転売ヤーは、仕入れ値より高く売れれば良いと悠長に構えていたところ、ニューモデルの販売が決まり慌てている最中です。

そもそも転売ヤーの多くは、多品種を扱ったり何百という在庫を抱えることは少ないので、少ない商品数である程度稼ぐには利益額を大きく取るしかありません。

なので、多少の値下げが他であったとしても「まだ大丈夫。こんなに利益があるんだから」と、それほど敏感に反応する必要はありません。

しかし、それは幻想です。

価格というものは、下がりだしたらあっという間に急降下し、あっさりと利益0円のところまできてしまいます。

やるべきは「最低利益の設定」

ですから、そうならないために予めやっておくべきことがあります。
「最低利益を設定する」です。

あなたも私も物販プレーヤーです。
物販プレーヤーが仕入れる時に考えることは「売価」です。

例えば、
・この商品群は市場で「△円」で売れている
・付加価値を付けてさらに高くできそうだ
・だから「〇円」で販売しよう
・そうすると「□円」の利益が出るな
といった具合です。

なのですが…。

そこで終わってしまっては、将来的に値段が下がりだしても、あなたは「まだ売れる…まだ利益が出る…」としつこく販売していることでしょう。

転売ヤーが焦って投げ売りをするのと同じような状態です。

そうならないために「最低利益の設定」が必要なのです。

最低利益を設定することで、周りの状況や在庫数に関係なく、処分するタイミングを決めることができます。

場合によっては損切であっても処分します。

設定していた利益が取れなくなる原因は、周りの値下げだけではありません。

物流費の高騰や為替の変動も関係してきます。
倉庫代の蓄積や販売手数料の改定などもあるでしょう。

それらを踏まえて、「とにかく利益が〇円以下になったら処分する」というルールを作り、それを粛々と実行するのが大事です。

「見切り千両、損切り万両」を実践しましょう。

いつまでも利益を追いかけるな!

手を前に伸ばしている女性

商品には必ず旬があり、終わりがあります。
それはどんな商品でも例外なく訪れます。

稀に何十年と売れ続ける商品がありますが、あくまでそういった商品は例外的なものです。

基本的には、プロダクトライフサイクルと呼ばれる「導入期・成長期・成熟期・飽和期・衰退期」という過程を経て、世の中から消えてなくなります。

近年はそのサイクルが加速度的に早くなっていて、私たちが扱う中国輸入商品も、もちろんその渦中にあります。

ですので、仕入れるときに「将来的に自社の主力商品になってほしい」「長く、高く、たくさん売れてほしい」と願うのは当然のことですが、それと同時にいつ終わらせるのか(最低利益の設定)ということも考えておかなくてはなりません。

「最初からそんなことを考えていたら、逆に長く売れないのでは?」とか、「いつまでも売るために努力をするのはモチベーションが下がる…」などと思うかもしれません。

ですが、極端な話をしますが、人は死にます。

「人が死ぬことを考えるのは怖い、不謹慎だ」などと言って、お葬式のやり方や作法、常識を知らない訳にはいきません。

あなたもそうやって学んできたはずです。

ちょっと例は極端ですが、「終わりのあるものの終わりを考える」ことは当たり前のことです。

まして、それが物販ビジネスの生産性に関わるのでは尚更です。

始める時に終わりを想定するからこそ、思い切りスタートを切ることができます。
終わりを想定しているので、最後まで全力で走ることもできます。

常にビジネスを止めないため、負のスパイラルに陥らないためにも、「最低利益の設定」をして、それを下回った時の処分を忘れないようにしましょう。


投稿者プロフィール

梅田 潤
梅田 潤
合同会社梅田事務所代表。1977年生まれ。大阪府出身。副業で中国輸入ビジネスを始め2014年に株式会社オークファンを退社し独立。現在も現役プレーヤーでAmazonの他、国内・海外クラウドファンディングにも取り組みながら、家族との時間を大切にする自分らしく自由な暮らしをしている。最新の著書に『「ゆる副業」のはじめかた 輸入・ネット販売』(翔泳社)

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