今回はこのニュースからお話をはじめます。
アマゾン、欠陥商品による損害に補償金 方針転換へ(JDIR JBpress Digital Innovation Review)
要約すると、アメリカのAmazonがマーケットプライスの出品者が販売した欠陥商品が原因で、購入者がケガなどをした場合、その賠償金を支払うようになったというニュースです。
これまでAmazonは商品の返品や返金については間に入って手続きをおこなっていましたが、商品によるケガなどの補償についても間に入るようになったということです。
今回は、このAmazonの方針転換が私たちの中国輸入ビジネスに与える影響について考えていきたいと思います。
目次
ToggleAmazon方針転換の内容と背景
Amazonの方針転換にはどんな背景があるのでしょうか?
出品者よりもAmazonが対応した方が良い?
これまでの同様のケースでは、Amazonはあくまで販売する場所を提供しているだけで、やり取りや連絡は購入者が直接出品者とおこなうようにしていました。
これは日本でも変わりませんね。
そうなると返品の時と同様に不正を働く輩が出てくるかもしれませんが、そこは不正を感知する仕組みや専門家に入ってもらい対処するようです。
また、賠償について出品者が応じない場合は、Amazonが代わりに支払う可能性もあるようです。
また、その一方で出品者に損害賠償保険に加入してもらう取り組みも進めるとのことで、万が一の時に備えて二重三重の補償対策がとられており購入者にとっては非常に安心できる内容となっています。
これは推察ですが、このように方針転換をしてきたのは、Amazonの流通額に占めるマーケットプレイスの割合が60%にも達し個別に出品者任せにしていられないという背景があるからかもしれません。
もしくはAmazonの信用・ブランドのために出品者任せにするよりはむしろAmazonが対応したほうがいいと判断したからかもしれません。
裁判でAmazonの責任が認められている
しかし、現実問題としてアメリカではAmazonに対して、出品者と共に、補償の責任を追及される裁判が起きています。
しかも、この記事内だけですが、3件中2件でAmazonの責任が認められています。
詳しい内容は上記のURLで確認してほしいのですが、Amazonにも責任があるとされた2件の商品は発火や破損など商品そのものに問題がありましたが、今回これを取り上げたのは訴えられた3商品中2商品が「中国製の商品だったから」です。
品質と価格は正比例
一昔前に比べて、中国製品は間違いなく品質が良くなりました。
とはいえ、まだまだ粗悪品を売っている業者も存在しています。
粗悪品は少なくなってきているけれど…
中国製の商品は、昔は「安かろう、悪かろう」を地で行く粗悪な商品がたくさんありました。
中国輸入ビジネスがこんなにも広がるずっと前の話です。
ですが、いまでは世界の工場として商品のレベルも格段に上がっていて、洗練されたデザインの商品やパッケージに出会うことも珍しいことではありません。
しかし、そういう一面がある反面、いまだにただ安いだけの粗悪品を販売している業者も少なからずいます。
そういう業者はとにかく売ってしまえばいいと考えているので商品の安全性は二の次でいかに安く販売するかに躍起になっているのです。
そんな中で私たちが中国から商品を仕入れるのですが、その業者が粗悪品を売っているのかはある程度は評価などで判断できますが、実際に検査をしたわけではないので安全性について詳細を確認するところまでには至りません。
安いだけの粗悪品に注意!
そうした中で、安く仕入れることに主眼を置きすぎて中国の一部の業者と同じようにとにかく安いものを仕入れようとすると、粗悪品に当たる可能性が高くなります。
品質に関してはピンキリといったところでしょうか。
ですので、私たちが気にするべきは、いかにキリの商品を掴まないようにするかということです。
そのためには、ある程度の品質を求めるならそれなりにお金がかかる、つまり原価が高くなる、ということを認識しなければなりません。
同じような商品で極端に安いような商品は「わぁ!安い!」と飛びつくのではなく、「何かおかしい…」とまず疑いの目をもって見ていく必要があります。
特に、最近のAmazonでは中国人の出品者が増えて、アリババなどで普通に見る金額では到底利益が出ないような価格で販売していることがあります。
そんな時に、極端に安い掘り出し物のような仕入れ先が見つかったとしても飛びつくのは危険です。
中国人の出品者は、仕入れをネットではなく工場からの直卸しであったり、もともと安く仕入れられる土壌があります。
そもそも私たちと環境が違いすぎるので、それを価格だけで比較してはいけません。
価格・品質以外にも大事な「安全性」
今回の記事では価格・品質以外の問題点にも触れられています。
法規制のない商品の安全性はどうやって見る?
それは、Amazonのマーケットプレイスは各国のAmazonでも最大級だが「製品安全不適合品や期限切れ商品、偽造・模倣品が数多くある」ということです。
これは、アメリカに限った話ではなく、日本でも同様のことが起きていると考えられます。
ちょっと検索してみただけでも、「本当に安全基準を満たしているのだろうか?」と疑問になるような商品もあります。
それがたとえば、法律で規制されているPSEや食品衛生法などであればそれに適合しているのかどうかは、出品者が商品説明に「検査済み」とか「適合検査済み」など何らかのかたちで伝えられていればわかります。
しかし、法律的な規制のない商品で安全性が担保されているかを、日本では自主的な業界団体の基準で検査をおこなっているような商品は中国輸入ではスルーされているケースが多くあります。
JISマークで担保されている安全性
身近な商品で中国輸入でもよくある商品でJISマークが取得されているものは、事務用品(ステープラーなど)、工具類(ペンチなど)、文房具(定規など)です。
生活に関係するありとあらゆる商品がJISマークを取得するために検査を受けて合格し安全性を担保しています。
この仕組みは昭和24年の工業標準化法制定以来、70年以上の歴史がありますので、日本で販売されている商品には、もはや安全性が担保されているのが当たり前と思われる状況になっています。
しかし、インターネットの普及と昨今の中国輸入ビジネスの広がりで、実際には安全性の検査がおこなわれていない(日本の基準で確認されていない)商品が容易に輸入できるようになってしまっています。
そのため、日本で売られている商品は安全だと信じ込んでいる消費者が購入しています。
悪く言えば、こういう状況を利用し安全だと思っているうちに、余計な費用を掛けずに売っているのです。
こういった状況であることを中国輸入ビジネスの当事者である私たちは自覚しなければなりません。
現実的な落としどころと「これから」
先ほど言ったような状況ではあるのですが、とはいえ…なのです。
それは、ほとんどの中国輸入ビジネスのプレーヤーは大企業ではなく、個人事業主レベルだからです。
できる限りの対応をすべし
つまり、安全性を確認しようとJIS規格のようなことを取扱商品全部にやることは不可能です。
それをしたからと言って売上が保証されることもありませんので費用対効果が合わないのです。
長期的にみればやっておいたほうがいい場面も出てくる可能性はありますが、それだけの資金力があるひとはほぼいないでしょう。
PSEや食品衛生法に関連する商品であれば該当する商品は限られますので「輸入しない」という判断で済むのですが、それ以外の一般的な商品となると「輸入しない」という判断は中国輸入ビジネスを辞めることと同義となります。
その点はAmazonも理解をしていて、出品者に損害賠償保険(PL保険)に加入してもらう取り組みも進めるようです。
ようは、こういう事故をゼロにするためにはJIS規格のようなものが必要なのです。
が、そこは無理なので、ゼロは無理だけどもし事故が発生した時に消費者も出品者もAmazonもそれぞれの損失が最小限になるようにする、という方向に動いています。
ブランドを守るための仕組み
というところから将来的なことを推察してみると、ブランド登録には商標が必要で、登録したブランドを保護するためのTransparencyという仕組みも始まっています。
これは偽物、偽造品からブランドを守るためのサービスで、Transparencyで発行されたタグがない商品は即座に偽物と判定されるものです。
それと、同様に安全性についてもAmazon内で販売するための規制や審査が始まってもおかしくありません。
たとえば、食品衛生法に関わる商品を出品する時には、Amazonにその検査結果を提出しなければ販売できない、など安全性についても今後Amazonが出品や品質を担保するためにそういう仕組みを作る可能性は否定できません。
Amazonブランドを守るため、つまりAmazonで売っている商品は安全ですと言い切れる環境を作っていこうとしています。
そのために、出品されている商品がちゃんと合法であって安全であるということが消費者の認識とずれを生じないようにしていくのではないかと思っています。
投稿者プロフィール
- 梅田 潤
- 合同会社梅田事務所代表。1977年生まれ。大阪府出身。副業で中国輸入ビジネスを始め2014年に株式会社オークファンを退社し独立。現在も現役プレーヤーでAmazonの他、国内・海外クラウドファンディングにも取り組みながら、家族との時間を大切にする自分らしく自由な暮らしをしている。最新の著書に『「ゆる副業」のはじめかた 輸入・ネット販売』(翔泳社)
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